中越国境を歩く

はじめに

めざましい経済発展を続ける中国とベトナム。そんな両国を日本中国、日本ベトナムと「線」でとらえる時代はもう終わった。華南の日系企業によるベトナム進出など、これからは中国ベトナムを含めた三角形の「面」でとらえる必要があるだろう。そこで今回、国境という「線」ではとどめきれないベトナム北部と中国南部の繋がりを考えるため、中越国境を陸路で歩いてみた。

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中越国境

陸路で中越国境を越えるには、主に東からモンカイ(クアンニン省)東興(広西チワン族 自治区以下広西)、ドンダン(ランソン省)̶憑祥(広西)、ラオカイ(ラオカイ省)河口(雲 南省)の3ルートがあり、それぞれバスのほか、モンカイへは「海の桂林」ことハロン湾(バ イチャイ)から高速船が、後二者へは鉄道がハノイから通じている。

ドンダンへ

今回は中越国境越えの中で一番ポピュラーなドンダン憑祥(ひょうしょう)を通っ てみる。ところでこの区間はハノイ北京、ハノイ(ザーラム)南寧の国際列車が通っ ていることでも有名である。だが、列車の速度が極端に遅いのと夜中の国境越え、およ び早朝のハノイ到着など、評判は今ひとつ。また今回は徒歩での国境越えや国境の街 の様子も知りたかったので、ドンダンまでローカル電車を利用してみた。

下り電車

2ドンダン行 M3 号列車はハノイより一駅先、紅河沿いの小さなロ ンビェン駅始発。初めて乗るベトナムの鉄道だが、客車の貧弱さと 乗客の少なさに驚かされる。それにしても物資の往来が多く、今 一番ホットな場所へ向かうはずなのにこの粗末さはなぜ? 聞け ば道路事情が格段に良くなり、列車の半分~ 2/3 の所要時間でい けるバスが人気(ダイレクトに広西に行くバスもあり)。また物流について言えば香港・ 広東にも近い海沿いのモンカイルートが多く使われているとのこと。なるほど私が乗っ たのは正真正銘、首都から辺境への「下り電車」だったのだ。

 

ザーラム駅

列車は5時間 10 分かけて 170km ほどを走行。ちなみにロンビェンの次の駅、ザーラ ム駅には南寧から来た中国の列車が一仕事を終えて休憩していた。標準軌仕様の中国 の列車も走行できるよう、この駅まではレールが3本になっている。それにしても車内 販売はともかく、列車が到着すると雲霞のように現れる、アジア的情緒豊かな駅の物売 りも 1 人とていない。まして胃袋だけでなく木のハードシートのせいでお尻も痛くな ればこの乗客の少なさは納得できる。安い (55,000VND = ¥270) のだけが取り柄のようだ。

国境の街

3ドンダンに到着した頃は日もどっぷりと暮れあたりは真っ暗。そ れにしてもここはなんの変哲もない田舎街だった。・・・ 目の前にあ る山の向こうが中国という点を除けば。 翌日、市場を冷やかし、フォーを食べればこの街に用はない。国境 へはタクシーやバイタクもあるが4 km ほどだというので歩いてみ る。もっとも大型車がスピードを出して走行しているのでタクシー が良いだろう。少し歩くと道路に交差して下に線路が見えて来た。 それにしてもこの線路が遠く北京やホーチミンにまで繋がっている のだから、眼下に見えるは頼りないほど限りなく細い、しかし一方で 気が遠くなるほど長い東アジアを縦貫する鉄の紐帯だとでも言って おこう。そしていよいよ国境地帯に。

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そして

それまでの人の少なさが嘘のように、ここでは制服を着た人があちこちにいて目を光 らせている。またたくさん停まっているトラック、その中はどれも空っぽだった。ベト ナム側からの輸出品を運び終えたのか、それともそもそも入ってなかったのか…。ト ラック同士を背中あわせにぴたりとつけて、中国から来た荷物を積み替えているトラッ クも。そんな中を通り抜けるとイミグレが見えてくる。噂されているような「不測の事 態」も起こらず、意外とあっさりと出国したその先は中国。紀元前の昔から交通の要衝 だったという「友誼関」を越えれば中国側の国境の街、憑祥だ。ここからは広西の区都、 南寧はもちろん、広州・深圳へのバスも多数。その先には香港、そして日本があった。

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